ウェブトラッキングのすべて

Webマーケターが知っておくべきサーバーサイドトラッキングの仕組みと実践

Tags: サーバーサイドトラッキング, ウェブトラッキング, Cookieレス, データ収集, Webマーケティング, プライバシー, GA4

サーバーサイドトラッキングが注目される背景

近年のプライバシー規制強化やテクノロジーの進化により、ウェブサイトにおける個人情報追跡の手法は大きな変革期を迎えています。特に、ブラウザによるサードパーティCookieの制限やITP(Intelligent Tracking Prevention)などのトラッキング防止機能の実装は、従来のクライアントサイドでのデータ収集に大きな影響を与えています。

このような状況下で、Cookieに依存しない、あるいはCookieへの依存度を減らす新たなデータ収集手法として「サーバーサイドトラッキング」が注目されています。ウェブマーケターの皆様にとって、この技術を理解し、適切に活用することは、精度の高いデータ分析や効果的なマーケティング施策の継続のために不可欠となっています。

本記事では、サーバーサイドトラッキングの基本的な仕組み、従来のクライアントサイドトラッキングとの違い、メリット・デメリット、そして実装のポイントについて解説いたします。

クライアントサイドトラッキングとサーバーサイドトラッキングの違い

ウェブサイトにおけるトラッキングは、主に「クライアントサイド」と「サーバーサイド」の2つのアプローチに分けられます。

クライアントサイドトラッキング

これは最も一般的で、これまで広く利用されてきた手法です。ユーザーのブラウザ(クライアント)上でJavaScriptコードなどが実行され、直接トラッキングベンダー(Google Analytics, Facebook Pixelなど)へデータが送信されます。

サーバーサイドトラッキング

一方、サーバーサイドトラッキングでは、まずユーザーブラウザからウェブサイトをホストするサーバー(またはデータ収集用の専用サーバー)へデータが送信されます。その後、このサーバー側でデータを加工したり、必要な情報のみを選別したりして、各トラッキングベンダーのサーバーへデータを転送します。

サーバーサイドトラッキングの仕組み

サーバーサイドトラッキングを実現するためには、いくつかの要素が必要となります。

  1. データレイヤー (Data Layer): ウェブサイト上で発生したイベント(ページの閲覧、ボタンクリック、購入など)に関する情報を一時的に保持するオブジェクトです。クライアントサイドとサーバーサイドの間でデータを連携するための「共通言語」のような役割を果たします。
  2. タグマネージャー: クライアントサイドまたはサーバーサイドで実行されるタグ(トラッキングコードなど)を一元管理するツールです。Google Tag Manager (GTM) には、サーバーサイドコンテナ機能が追加され、サーバーサイドトラッキングの構築が容易になりました。
  3. サーバーサイドコンテナ: GTMのようなタグマネージャーにおいて、サーバーサイドでのデータ処理や転送ルールを定義する場所です。ブラウザから受け取ったデータを、ここで設定したルールに基づいて各ベンダーへ送信します。
  4. クラウド環境: サーバーサイドコンテナを実行するためのサーバー環境が必要です。Google Cloud Platform (GCP), Amazon Web Services (AWS), Microsoft Azureなどのクラウドサービスを利用するのが一般的です。

具体的なデータの流れとしては、以下のようになります。

  1. ユーザーがウェブサイト上でアクションを起こす(例: 商品を購入)。
  2. クライアントサイドのJavaScriptがこれを検知し、イベント情報をデータレイヤーにプッシュする。
  3. データレイヤーの情報が、専用のエンドポイントを通じて自社サーバー(またはデータ収集サーバー上のサーバーサイドコンテナ)に送信される。
  4. サーバーサイドコンテナ上で、受け取ったデータが必要に応じて加工・整形される。例えば、個人を特定できる情報(PII: Personally Identifiable Information)をハッシュ化したり、不要な情報を削除したりします。
  5. 加工されたデータが、サーバーサイドコンテナで設定されたルールに基づき、Google Analytics 4 (GA4) や広告プラットフォームなどの各ベンダーのAPIへ送信される。

このように、ユーザーブラウザからトラッキングベンダーへの直接的な通信を減らし、間に自社サーバーを介することで、より制御可能で安定したデータ収集が可能になります。

サーバーサイドトラッキングのメリット

サーバーサイドトラッキングを導入することには、いくつかの重要なメリットがあります。

サーバーサイドトラッキングのデメリットと注意点

多くのメリットがある一方で、サーバーサイドトラッキングの導入にはデメリットや注意すべき点も存在します。

サーバーサイドトラッキングの実装のポイント

サーバーサイドトラッキングを導入する際は、以下の点を考慮すると良いでしょう。

まとめ

サーバーサイドトラッキングは、Cookie規制やプライバシー意識の高まりという時代の変化に対応するための重要な技術です。クライアントサイドトラッキングの課題を克服し、より正確で安定したデータ収集、そして安全なデータ管理を実現する可能性を秘めています。

導入には技術的なハードルやコストを伴いますが、そのメリットは、変化の激しいデジタルマーケティングの世界で競争力を維持するために非常に大きいと言えます。ウェブマーケターとしては、この技術の基本を理解し、自身の業務や組織におけるデータ収集戦略の一部として、サーバーサイドトラッキングの導入や活用を検討していくことが求められています。常に最新の技術動向や法規制に注意を払いながら、ユーザープライバシーを尊重したデータ活用を進めていく姿勢が重要となります。